作品一覧

箏独奏のための
火垂る II
HOTARU II

作曲年 1980年
委嘱者 石垣清美
構 成 箏独奏
時 間 11分
出版楽譜 無し
解 説 何年か前、私は野坂昭如氏の「火垂るの墓」という小節に接した。物語は、終戦の年に栄養失調で死んだ当時中学三年の浮浪児と、その妹の死までを氏の原体験をもとに描かれた短編で、「空襲の焔に焼かれ、幼い妹と二人防空壕の横穴で、灯りがわりに蛍を捕まえて蚊帳に入れ、かろうじて生きて行く生活。次第に痩せおとろえ、やがて死ぬ妹。彼は妹の屍体を焼くが、火が燃え尽きたとき、まわりに夥しい蛍が群れる。そして彼は妹がこの蛍と一緒に天国へのぼるのだと思う。」というのがこの物語のあらすじだが、私は氏の独特の文体と、そこにあるおぞましい程の情景の中に流れる一筋の美しさに、突き上げる様な感動を覚え、いつかこの“火垂る”という題を自分の作品の上に置きたいと思っていた。此の度の“火垂る〜II〜(箏独奏の為に)”は、作曲中前作の十七弦の為に書いた“火垂る”の余韻が私の裡から終始離れず、その為同じタイトルを附けるにいたった。この二つの作品は物語のあらすじとは切り離したもので、私の感知の流露としての覚え書きであることを記しておく。1980年3月作曲。[作曲者]
収録媒体 日本音楽の巨匠 現代箏曲―沢井忠夫 (VZCG-507)
箏 沢井忠夫作品集4 (VZCG-581)

戻る

沢井忠夫 書 「箏」

沢井忠夫 書 「箏」